シェフのフセインさんは、日本に真のインド料理を伝えたカリスマシェフだという。

本国ではタージ系ホテルのシェフを歴任し、来日してからは、九段にあった「アジャンタ」他「シタール」など、多くの店のシェフをしながら後任を育てた。

「たんどーる」の塚本さんや渡辺さんも氏の下で修行したのだという。

そんなカリスマシェフが、今春初めて自分の店を開かれた。

これは日本インド料理界にとって、事件である。

まずタンドーリーチキンやナンなど、おなじみのタンドール料理からしてまったく違う。

チキンは表面はさらりとしていながら、肉がしっとりとして肉汁が溢れだす。

そして香りが深い。

さらにナンは、パサついているところが微塵もなく、柔らかく歯に食い込んで、小麦粉の甘い香りがする。

そしてカレーである。

今回頼んだのは、焼き物が、ジンガーディルバハールとたんドーリーチキンに、バターナーン、ガーリックナーン、シンプルなナーンに、ほのかに甘いベジャワリーナーン。

カレーが、サグマトン、ミックスベジタブル、マトンジャーハンキリーコールマー、ダールマカニー、チャナマーサーラー、マトンサーラーの六種類で、それに南のものだけど、サンバルとラッサムを、お願いした。

さらに、レモンライスとチキンダムビルヤーニーを追加して万全である。

カレーで気に入ったのは、豆を長時間煮込んで、極限まで抽出された豆の甘みとスパイス香が優しく溶け合う、ダールマカニーと、宮廷料理であるという、クリームとカシューナッツが溶け込んだ、エレガントなカレーのマトンジャーハンキリーコールマーである。

これらを混ぜ混ぜしながら食べると、味が様々に変化してたまらない。

次第に気分が上気して、鼻息荒くなり、手で食べたくなる。

さらに、ビルヤーニー（ビリヤニ）もまったく違う。

ネパールの方々がインド料理店で作っている、多くのビリヤニとはまったく異なる。

ロシア料理のガルシチョークやフランス料理のアンクルートのような、パイ包み焼きならぬナン包み焼きで、ドーム上に膨らんだナンを開けるとビリヤニが現れる。

そのビリヤニは、米が立っていて、油っぽさはどこにもなく、さらりとしている。

うっすらと米に染み込んだ鶏の滋味がおいしい。

こりゃあすごい店だ。

大森に住み、働く人が羨ましい。

今度はタンドールで、様々な野菜や肉を焼いてもらいたい。

さしずめカリフラワーの焼いたのを食べたいな。